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叱って育てるは正しい?平均への回帰の考え方

厳しく叱れば、人は危機感を持って頑張って行動し、褒めれば、人は甘えて怠けてしまう。

このような考え方は未だに世の中に蔓延しており、「叱って育てる」という指導法が正しいと考えている指導者が多いことも事実だろう。

実際、スポーツやビジネス、教育などの現場において、成績が良く褒めた後はパフォーマンスが下がり、逆に成績が悪く厳しく指導した後はパフォーマンスが上がる現象を頻繁に目にする。

 

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叱って育てるは正しい?

とういうことは、やはり「叱って育てる」という考え方が正しいということになるのだろうか。

もちろん、このような考えは間違っている。

実際、自己効力感が高く、高いパフォーマンスを発揮している人は、叱られるより褒められる経験を多くしている人が多いという。

 

「叱ると伸びる」ように見える理由

では、なぜ、叱るとパフォーマンスが向上し、褒めるとパフォーマンスが下がるという間違った認識をしてしまうだろうか。

これは「平均への回帰」という統計的な現象が関係している。

平均への回帰とは「ある集計データに偏りが生じた場合、再度同じような手続きで集計したデータは真の値に近づく」というものだ。 

簡単に言うと、「本来の実力とはかけ離れた極端な結果がでることもあるが、その次は確率的に考えると本来の実力に近い結果が出やすい。」ということである。

例えば、ビジネスの世界に置き換えてみる。月間500万円を売り上げるとある営業マンがいるとする。

その営業マンが、4月に1000万円売り上げたのにも関わらず、次の5月にはまた、同じように500万円の売り上げに戻ってしまうということがよくあるだろう。

これは、その営業マンが5月にサボったわけでも、能力が落ちたわけでもなく、4月がたまたま営業成績が良かっただけだと、考えるのが妥当である。

なぜならば、その営業マンの真の実力は月間500万円であり、毎月の売上平均を取っていくとその実力に収束していくはずなのだから。

 一般的に、営業成績は常に一定のものではなく、真の実力より悪かったり、良かったりとバラツキがあるものだ。

ある月には、その営業マンの実力からは考えられないほど極端に良い営業成績を上げることもあるだろう。

そして、このような売上成績を残す営業マンに対して、指導者は極端に成績が良い時は褒め、極端に成績悪い時は叱るといった指導をしてしまうのだ。

そうすると、目に見える現象としては、叱った次の月は営業成績が伸び、褒めた次の月は営業成績が伸びるということが起こる。

 

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そのため、

「叱る→頑張る→パフォーマンスが上がる」

「褒める→怠ける→パフォーマンスが下がる」

という因果関係があると誤認してしまうのだ。

しかし実際は、上記した通り、極端な成績を残した後の平均への回帰によって、その営業マンの真の実力に近い成績を残しているだけなのだ。

 

科学的な根拠を持った意思決定を心掛けよう

「叱られたことで、危機感が増して、パフォーマンスが向上した。 

というような例もあるだろう。

ただ、長期的に見ると、叱るという行為はモチベーション低下をもたらし、ひいてはパフォーマンスの低下に繋がるのは間違いない。 

今回の営業マンの例のように、感覚的なデータや情報に頼って、意思決定をしてしまうと、本来取るべき最適解とはかけ離れた行動をとってしまうことがある。

「平均への回帰」の話は、しっかりと科学的根拠に基づいた意思決定を行うことの必要性を示唆してくれるのではないか。